保健師の職場の中でも珍しいのが、警視庁や警察署です。警察組織では、刑事以外にも様々な職員が働いています。
保健師もそんな職員の一人であり、年に1人~数人ではありますが保健師の募集が行われています。
警察署や警視庁とはどんな組織で、その中で保健師はどんな仕事をするのか、転職を希望する際の流れや試験内容、求人応募のポイントを紹介します。
目次(もくじ)
警察で働く保健師の役割は?
まずは、よく混同されがちな警察署と警視庁の違いについて解説します。さらに、警察で働く保健師がどんな仕事をするのかをまとめます。
警察署と警視庁の違いは?
日本では、地域ごとに「〇〇警察署」といった管轄署を置き、その上に、都道府県内の警察署全体を管轄する「県警」「道警」「府警」を設置しています。
この中で東京都を管轄するのが、「警視庁」です。警視庁は、東京都全体の治安維持や事件捜査を担当するため、かなり大きな組織となります。
また似た名称の「警察庁」は、各都道府県の警察署を管理する組織であり、警察全体の防犯対策、刑法の運用、規則の作成などを担当します。
警察庁で働くのは国家公務員であり、警視庁や警察署で働くのは、国家公務員と地方公務員とに分かれます。
警察ではどんな人が働いている?
警察で働くのは、大きく分けて「警察官」と「警察行政職員」です。
警察行政職員とは、安全、安心な生活のため、専門スキルを活かして活躍する職員を指します。
警察行政職員は、大きく「事務職」と「技術職」の2つに分けられ、保健師は「技術職」に含まれます。
警察で働く保健師の仕事内容は?
警察で働く保健師は、保健・看護に関する専門知識を用いて、警察官や警察行政職員の病気の予防、療養の指導、環境衛生の指導を行います。
公務員であるため行政保健師に近いですが、具体的な業務内容は、産業保健師と似ています。
<関連記事>:産業保健師、企業での仕事内容は?
業務内容の一つに、警察職員の健康診断の計画や実施、署員からの健康相談に応じてアドバイスや指導があります。
研修など、健康に関する啓発活動のほか、署内の衛生管理や集団感染の予防も、保健師の役割です。
また一般の保健師とは異なる業務内容として、「警備実施時などの救護」があります。
警備に当たる署員にはケガや事故に遭うリスクが付きまといますが、その際の救護活動は保健師の役目になります。
緊急時にも的確に判断し行動するための専門的な知識や心構え、柔軟性や機敏さなども求められます。
また重大犯罪や犯罪者に関わることで、一般の生活では遭遇しないような重いストレスを抱えてしまう職員もいます。
そのような署員への精神的なケアも、保健師の役割です。
警察で働く保健師、求人の特徴や試験内容は?
警察で働く保健師の求人には、どのような特徴があるのでしょう。
応募要件や勤務条件を確認し、選考の流れや試験内容を説明します。
警察で働く保健師、求人の特徴は?
警察からの保健師求人で最も特徴的なのが、その「希少性」です。例えば警視庁では、求人そのものがない年もあり、あったとしても1年に1~3人程度です。
警察署での募集も同様に、かなり少なくなります。結果的に採用倍率も高く、警視庁では、平成28年度の採用では6.7倍、27年度は14.3倍でした。
受験資格として、保健師免許を取得、もしくは取得見込みであることが求められます。
禁錮以上の刑に処せられたことがある人、東京都職員として懲戒免職になったことがある人は応募することができません。
また、それぞれに年齢制限が設けられています。
続いて勤務条件を見ていきましょう。初任給は、平均して20万円前後です。
保健師の基本給としては高い方ではありませんが、年間で4か月分近くのボーナスが支給され、時間外勤務手当や扶養手当、住居手当、通勤手当などがしっかり支給されるため、収入は安定します。
勤続による昇給や、能力による昇任制度があり、医療制度や祝い金、各種保険や施設の優待利用など、福利厚生が充実しています。
勤務形態では、平日の日勤で残業はほとんどありません。全体に条件が良く、長く働きやすい職場と言えます。
警視庁や警察署での選考の流れは?
警視庁では、警察官や警察行政職員に興味がある人を対象にした「採用イベント」が行われ、職務内容や採用試験について知ることができます。
不定期の開催ではありますが、選考に進むことを希望する場合は足を運んでみるようにしましょう。
警察行政職員の採用試験は、警視庁や警察学校で、年に1回行われます。警視庁では6~7月に申込み、9月に第一次選考、10月に第二次選考が行われています。
一方、平成25年度の神奈川県警の採用試験では、4月下旬に申込み、6月下旬に1次試験、7月下旬に2次試験が行われました。
試験時期は地域によるため、ホームページで日程を必ず確認してください。
流れとして、各警察署や警視庁本部から採用案内を取り寄せ、申込をします。
採用試験を受け、合格すれば「採用候補者名簿」に登録され、面接を経て内定となります。
そして約1か月間警察学校で学んだ後、配属先での勤務がスタートします。
警察で働く保健師、試験内容は?
「警察行政職員Ⅱ類」に該当する保健師の採用試験では、一次選考として教養試験と専門試験、論文があります。
教養試験では五肢択一問題が40題、専門試験では職務に必要な専門知識について、記述式で出題されます。論文は1題必須回答です。
そして二次選考では、個別面接、身体検査、警察職員としての適性検査が行われます。
面接では人物について見る一般面接と、職務に関連する専門知識についての専門面接とがあります。
身体検査では、職務遂行に必要な健康状態を確認します。
保健師として警察で働くために、やるべき事は?
警察からの保健師求人は少ないため、チャンスを逃さないよう、しっかり準備することが大切です。
やっておくべきことや、求職活動のコツを紹介します。
警察署・警視庁のホームページをチェックする
警察署での保健師募集は、年に1~数人です。
そのため警視庁の採用サイトや、希望する警察署のホームページにある「職員採用案内」「募集状況及び職種案内」といったページを定期的にチェックし、募集を逃さないようにします。
<出典>採用案内(警察行政職員)/警視庁
採用試験や職務内容などについて説明を受けられる、「採用イベント」の情報を逃さずチェックして、参加しましょう。
保健師や看護系の学校、ハローワークなどで、各地域の警察署からの募集が見られることもあります。
公務員試験対策をする
警察署や警視庁への求職では、公務員試験対策が欠かせません。大学や資格学校で行われている「公務員試験対策講座」を受講する方法があります。
一次試験対策として、数的処理や判断推理の問題、過去問題集や一般常識問題を繰り返し解いて力をつけます。
国語力強化や時事問題対策のため、新聞やニュース解説を読むことも大切です。
体力検査のためのジョギングや筋力トレーニング、論文対策や模擬面接を受けておくことも、採用試験の対策になります。
看護師専門の転職サイトに登録する
保健師求人は、看護師専門の転職サイトに豊富に掲載されます。
警察署からの求人が掲載されることもあるので、2~3のサイトに登録しておき、突発的な求人も逃さないようにします。
<関連記事>:保健師の就職率・求人状況は?
転職サイトで助かるのは、保健師転職のプロであるエージェントに色々と相談できる点です。
求人の紹介だけでなく、過去の求人状況や、試験の傾向、対策などを教えてもらうことができます。
的確な情報収集と対策で、大事なチャンスに備えましょう。
- 警察官や職員の健康管理、怪我の救護、精神的ケアを担当する
- 求人は年に1~3人程度の署が多く、求人が出ない年もある
- 日勤で、手当や福利厚生が手厚く、長く働きやすい
- 採用試験の実施時期は署によって違うため、ホームページでチェック
- 一次選考で筆記試験が行われ、二次選考で面接や身体検査、適性検査がある
- 公務員試験対策を準備し、看護師専門の転職サイトを活用する